医者向けのちょっといい情報

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小児抗菌薬適正使用支援加算と抗菌薬適正使用支援加算

今回の診療報酬改定で、様々な新設がありますが、ちょっと注目したいのが、抗菌薬の適正使用に関しての労力にコストを与えたことです。政府は薬剤耐性(AMR)対策アクションプランというものを打ち出しており、2013年と比較して、2020年までに抗菌薬の使用量を全体で1/3減らす、という目標を掲げています。それを実現するための作戦ともいえますが、まずはどういうものかを、それぞれ記載します。敢えて、施設基準などは定め事の通り書いていますので、長文過ぎて見苦しいところがありますが、ご容赦ください。

ちなみに出典は、

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000191963.pdf

を元にしています。

小児抗菌薬適正使用支援加算:80点

急性気道感染症又は急性下痢症により受診した患者であって、診察の結果、抗菌薬の投与の必要性が認められないため抗菌薬を使用しないものに対して、療養上必要な指導及び検査結果の説明を行い、文書により説明内容を提供した場合は、小児抗菌薬適正使用支援加算として、80点を所定点数に加算する。

施設基準

  • 感染症の研修会などに定期的に参加している
  • 病院の場合は、データ提出加算2を算定している

 

抗菌薬適正使用支援加算:100点

感染防止対策地域連携加算を算定する場合について、抗菌薬の適正な使用の支援に関す る体制につき別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者については、抗菌薬適正使用支援加算として、100点を更に所定点数に加算する。

施設基準

  1. 感染防止対策地域連携加算を算定していること。
  2. 以下の構成員からなる抗菌薬適正使用支援チームを組織し、抗菌薬の適正使用 の支援に係る業務を行うこと。
    ① 感染症の診療について3年以上の経験を有する専任の常勤医師(歯科医療を担 当する保険医療機関にあっては、当該経験を有する専任の常勤歯科医師)
    ② 5年以上感染管理に従事した経験を有し、感染管理に係る適切な研修を修了し た専任の看護師
    ③ 3年以上の病院勤務経験を持つ感染症診療にかかわる専任の薬剤師
    ④ 3年以上の病院勤務経験を持つ専任の臨床検査技師
    ①に定める医師、②に定める看護師、③に定める薬剤師又は④に定める臨床検査 技師のうち1名は専従であること。なお、抗菌薬適正使用支援チームの専従の職 員については、感染制御チームの専従者と異なることが望ましい。
  3. 抗菌薬適正使用支援チームは以下の業務を行うこと。
    ①広域抗菌薬等の特定の抗菌薬を使用する患者、菌血症等の特定の感染症兆候の ある患者、免疫不全状態等の特定の患者集団など感染症早期からのモニタリン グを実施する患者を施設の状況に応じて設定する。
    ②感染症治療の早期モニタリングにおいて、①で設定した対象患者を把握後、適切な微生物検査・血液検査・画像検査等の実施状況、初期選択抗菌薬の選択・用法・用量の適切性、必要に応じた治療薬物モニタリングの実施、微生物検査等の治療方針への活用状況などを経時的に評価し、必要に応じて主治医にフィードバックを行う。
    ③適切な検体採取と培養検査の提出(血液培養の複数セット採取など)や、施設内のアンチバイオグラムの作成など、微生物検査・臨床検査が適正に利用可能な体制を整備する。
    ④抗菌薬使用状況や血液培養複数セット提出率などのプロセス指標及び耐性菌 発生率や抗菌薬使用量などのアウトカム指標を定期的に評価する。
    ⑤抗菌薬の適正な使用を目的とした職員の研修を少なくとも年2回程度実施す る。また院内の抗菌薬使用に関するマニュアルを作成する。
    ⑥当該保険医療機関内で使用可能な抗菌薬の種類、用量等について定期的に見直し、必要性の低い抗菌薬について医療機関内での使用中止を提案する。

 

理念としては大事なこと

抗菌薬の話になると、耳が痛いのですけど、必要ない抗菌薬の使用を抑える、それに関して説明などに要した時間、労力を実際に評価して報酬をつけるのは、大事なことですが、医師の間からは、実効性を疑う声も。小児抗菌薬適正使用支援加算については、「なぜ、小児だけなのか?」「結局、カルテに一言記載して、抗菌薬が出なければ80点なんですよね、小児科への単純な加増なのでは?」という意見もありました。

そして、抗菌薬適正使用支援加算は病院対象の加算ですが、内容はともかく、クリアすべき施設基準の内容が、とにかく無駄に長い…。大事なこと、必要なことを盛り込みたいのはわかりますけど、特に3番の項目など、評価のしようもないですよね。実効性のないルール決めは、話を複雑にするだけでなく、曖昧な解釈を増やす元になるので、もっとシンプルに表記した方がいいのでは?と思います。

予想される意見

以下のようなことを考える医師もいるかもしれません。私もちょっと思うところがありますので、あえて書いてみます。

  • 二次感染のことを考慮したりすると、抗菌薬の処方の必要性を、数分の診察の中で的確に判断するのは難しい。
  • 一般的な考え方として、感冒等に抗菌薬の処方が効くというものがあり、それを覆してもらうように限られた診察時に説明することは、意外と難しい。
  • 小児科の診療では加算がつくが、ほかの科の診療ではつかないので、全体としてはあまり実効性がないのでは?
  • 急性上気道炎などの保険病名を記載して、80点の加算を不正につける不届き者が現れそう。どうチェックするのか?
  • 重要性は理解していても、説明にかかる時間や、処方しなかった人にその後に起きた結果について(関係あろうとなかろうと)クレームを受ける可能性、などを考えると、あえてやり方を変えるべきかどうか。
  • CMやメディアを使って、もっと抗菌薬の適正使用についてのキャンペーンを行った方が、多分効果がある。
  • 抗菌薬適正使用支援加算の100点は、いろいろな労力のことを考えるとまだ低すぎなのでは?

まとめ

抗菌薬の適正使用に関しての労力のコストを算定できるという、なかなか面白い試みだと思いますが、実際に、抗菌薬の使用量が減るかどうか、きちんと評価が必要でしょう。抗菌薬の使用量の減少は、医療費削減にもつながる訳ですし、現実に耐性菌についての問題も深刻になっているわけですから、医師に責任を丸投げするのではなく、政府機関が率先してキャンペーンをするなどの動きを期待したいですね。