医者向けのちょっといい情報

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堺市立医療センター、主治医が検査結果確認せず、治療開始が遅れた結果、患者は死亡

堺市立医療センターは、70代女性に対する胃がんの病理検査結果が放置され、治療開始が約7カ月間遅れるという不祥事があったと発表した。主治医や検査担当の医師が確認を怠ったのが原因で、女性は治療開始から約1年後に死亡した。

状況

2016年2月に女性は胃カメラ、生検(病理検査)を受けたと思われますが、主治医だった腎代謝免疫内科の30代の男性医師は「胃がん」という病理検査の結果は見ずに、カメラの結果から、「胃潰瘍と貧血」と女性に説明したとのことです。

直接検査を担当した消化器内科の30代の男性医師も結果を見ていなかったため、胃がんという結果が放置され、患者さんが9月に嘔吐で入院した際に、このことが発覚しました。女性は胃がんの切除と化学療法などを受けたが死亡。

どうして?

  1. 胃カメラを施行した医師は、カルテに生検を施行した旨を記載しなかった。(しかし胃カメラの結果報告書には記載されているため、いいわけにはなりませんけど…)
  2. 2016年3月に主治医は検査結果に気がつかないまま、退職してしまった。そもそも2月の時点で退職前であり、多忙であったと思われる。
  3. 電子カルテのシステム上、組織検査の結果は意図的に確認しない限り、告知はされない。確認したかどうかのチェックシステムもなかった。
  4. 胃カメラを依頼された医師も検査結果を確認せず、放置した。

 

個人的意見

一人で開業でやっていますと、基本的に患者さんに対して行った検査やお話はすべて把握していますし、患者さんが来院しないとしても、病理検査のレポートにはすべて目を通すことにしてますので、今回みたいな事態は「信じられない」です。

ただ、大病院でこのように役割分担があると、少なくとも検査した医師からすれば、「指示を出した主治医は結果を確認するだろう」と思うでしょうし、病理医からしても、きちんとレポートを出したから、やはり主治医が確認するものとして、直接連絡はしないのも無理はないかと思います。

医療系サイトの掲示板では、「忙しすぎるのが問題でしょう」という書き込みがありましたが、とんでもない意見で、今回の件で、検査を指示しながら、結果の確認を怠った主治医の責任が重いのは間違いがないですし、システム上の問題や、過重労働の問題に置き換えてしまうのは間違いかと思います。

どうしたらいいか

堺市立医療センターのHPに改善策が記載されていましたので、そのまま引用しますが、

 

  1. 病理組織診検査報告書の確認・ダブルチェック病理検査で悪性所見があったものについては、全例、病理医から担当科の部長へファイルを送り、主治医が適切な処置をしているかチェックする運用に変更した。
  2. 担当医交代時の申し送り本事例を院内周知し、交代時に、患者カルテや各種検査結果等を確認するよう徹底を図った。
  3. システムの改善平成30年度中の電子カルテシステム等の更新に伴い、各種検査結果等をわかりやすく表示し、それらをいつ、誰が確認したか把握できるシステムを導入する。 

 

  まあ、悪性所見について、見落とさないようにチェックを加えるのは間違っていないですけど、やはり、個人の資質についてもチェックして、「ミスをさせない」ような教育も必要かと思います。勤務医時代に、なんとか対策委員会でいくら対応策を延々と話し合ったり、システムの改善を行っても、「なんだか本当にターゲットにしている人たちはわかっているのかな?」と思いましたから。

 

まとめ

特に患者さんからすると「信じられない」事件なのですが、検査結果を確認しなかったという事件は、過去にも数多く繰り返され、結局いかなる対策をしても、おそらくは今後も起きるものかと思います。

こういうミスは患者さんの生死に直結するため、あってはならないですし、全体的な対策やシステムの改善は必要です。ただ、結局最後は人間が行うものなので、チェックポイントをむやみに増やすことは、どこかに負担を増やすということで、その部分でのミスを増やす可能性があるということも考える必要があります。

自分も、日々の診療の中で、こういう大きなミスをしないようにしなければ、と厳粛な気持ちになりました。