ANA Doctor on boardとJAL DOCTOR登録制度

ANA Doctor on boardとJAL DOCTOR登録制度

今日は、飛行機の中で緊急時が起きたときの話です。

そう、ドラマではよくあるシーン「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんかー」ですが、ドラマだとキムタクのようなイケメンがちゃちゃっと処置して、ハッピーエンドなんですけど、実際は…。

正式なデーターはありませんが、大半の医者は名乗り出ない、と言われています。

医者が名乗り出ない理由

  • 専門ではない
  • 自信がない
  • メリットがない

ちょっと不謹慎といわれるでしょうが、マイナー科医師(私もですが)は基本的に救命処置に疎いのです。お産などもほとんど経験がありません。機内で必要とされるときは、やはりそういうスキルが必要ですから、それこそ「無理なものは無理」なのです。

また、内科や外科のドクターでも、開業して何十年もそういう現場に接する機会がないと、スキルを忘れてしまっている可能性があります。

そして、一番の問題が、「守られていない」ことです。例えば、機内で、救命処置を行ったものの、不幸にも亡くなった患者さんの遺族から訴えられた、という実例があるのです。機内では十分な医療器具もモニターもなく、短い時間で直感的に的確な判断が要求されることもあるはずです。病院では可能であっても、機内では不幸にも救命できない場合もあるはずです。訴訟になった場合、勝訴しても時間的精神的ダメージがバカになりませんし、敗訴したらそれこそです。このご時世も手伝って、名乗り出ない医師が多いのは私も理解できます。

航空会社の対応

なかなか名乗りにくい状況は航空会社も理解していて、日本のANAとJALはそれぞれ登録制度を設けています。

ANAの場合

ANA Doctor on boardという名称で登録制度を設けています。以下はANAのHPからの引用です。

ANA Doctor on boardは機内にて急に具合が悪くなったお客様に、客室乗務員が「ドクターコール」(アナウンスによる医療関係者の呼び出し)をせず、当制度にご登録いただいた医師の方に医療処置の協力依頼をさせていただく制度です。
なお、当制度の運用は2016年9月1日搭乗便より開始いたします。
※登録された医師の方でも、体調不良などにより対応が困難な場合は、その旨を客室乗務員へお伝えいただければ、ご辞退いただくことも可能です。
※実施いただいた医療行為に起因して、医療行為を受けられたお客様に対する損害賠償責任が発生した場合、故意または重過失の場合を除き、ANAが主体となって対応させていただきます。

最後の一文がミソで、医師が懸念する損害賠償について、きちんとフォローしてくれる旨が記載されています。

JALの場合

基本的にはANAと同じ感じですね。JAL DOCTOR登録制度というのがあります。以下はJALのHPから抜粋です。

当登録制度は、医師資格証をお持ちの医師の方に任意でのお願いになります。
JALグループ便機内で急病人や怪我人が発生し、医療援助が必要となった場合、登録いただいた医師の方へ客室乗務員が直接お声掛けをさせていただく、国内航空会社では初めての取り組みとなります。
ご登録時に医師情報が登録されますので、JALグループ便ご予約の際にお得意様番号を登録いただくことで、緊急医療が必要な事態が発生した場合、客室乗務員が医師の方に速やかに援助をお願いさせていただくことが可能となります。

※飲酒や体調不良など、対応が困難な場合は、その旨を客室乗務員へお伝えくだされば、ご辞退いただくことも可能です。

保険やサポート体制に関しても以下の通りの記載がありますが…。

賠償責任と保険
機内での医療援助に起因して、医療行為を受けたお客さまに対し民事上の損害賠償責任が生じた場合には、故意、重過失の場合を除き、当社が付保する損害賠償責任保険を適用いたします。援助者が個別に加入されている損害賠償責任保険が適用されるときは、その保険金額を超える部分に当社の保険を適用いたします。

航空機内救急医療支援体制について
救急支援依頼時は、日本人現役救急科専門医から通信にて助言を得る体制(24時間・365日対応)も準備しておりますので、必要に応じご活用ください。

機内備品について
機内で病気になられたお客さまに対し適切な処置が行えるように、1993年のドクターキット搭載以来、機内医薬品・医療機器等の充実も図っております。詳細については 航空機内の搭載医療品・医薬品をご確認ください。

ちょっと気になったのですが、損害賠償が生じたときは、まず医師個人の保険を適用しろということなのでしょうか。

ちなみに両航空会社とも、対応した場合のお礼(報酬)については明記されていません。

まとめ

JALもANAも、緊急時になるべく迅速に対応したいという、誠意らしいものが感じられますが、それはあくまで医者以外のお客様に対してであって、医者がいざというときに気持ちよく対応するということには、十分配慮がされているとはいいがたいです。例えば、機内の対応は、当然、診療報酬が請求できませんが、本来であれば当然請求できる性質のものです。リスクが高い状況で対応した場合に、相応の報酬が約束されるのであれば、損害賠償もあっていいと思いますが、成功しても報酬0、失敗したら最悪人生を棒に振りかねないという状態なのは間違いなく、法制度が整備されない限り、進んで名乗り出る医者が少ないのは仕方ないのかなと思います。

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