さて、ネットニュースを見ていたら、ちょっと気になる記事が。
まだ起案の段階で、これから国会の議論が行われるということですが。いろいろ予算の削減を行うのはいいのですが、現場としては結構困ることがあります。
ジェネリック医薬品とは
薬(先発品)は開発した会社が特許権を所有しており、特許権が切れるのは20~25年後ですが、特許権がなくなった成分に関してはほかの会社が、同等品を製造販売することができます。それがジェネリック医薬品です。もちろん、生物学的同等性試験などを行って認可を受ける必要がありますが、薬効成分自体はすでに世の中へ出ているもので、有効性が証明されている分、開発費を大幅に少なくすることができるので、値段を安くすることができるのです。
海外では広く普及している
アメリカでは9割近く、ほかの欧米諸国などでも、かなり高い割合で普及しています。これはひとえに「お値段が安いから」に他なりません。
日本ではどうして普及しないのか
一方日本では、66.4%(日本ジェネリック製薬協会調べ)ということで、近年は大分増えてきたものの、海外ほどは普及していません。あくまで私見ですけど、理由としては
- 元々、日本の医師は製品名で処方箋を書いていたし、院内処方が主流だった。
- 現在では一般名(成分名)処方が主流だが、一般名処方に加算がつくようになるまで、医師側には何もメリットがなかった。
- 先発品メーカーのMRは熱心に営業、接待していたが、後発品メーカーはほとんどそういうことをせず、存在自体を知らなかった。知らない薬を出すより、普段使いなれている薬の方が安心と考えた。
- 実際、一部のジェネリック医薬品で不具合の報告があった。
こんな感じでしょうか。でも、少し前まで4割くらいだったと記憶していますので、大分普及してきたなあと思います。
生活保護受給者の医療費
これについては、全額公費負担となり、前出の記事によると、生活保護受給者の医療費の総額は1兆8000億円という金額のようです。ただでさえ、医療費を削減したい厚労省としては、ここにも手をつけたいということでしょう。
お薬に対する考え方
ジェネリック医薬品という概念が一般に大分浸透してきたので、多くの患者さんは「効き目に変わりがないなら安い医療品がいい」という主張の方が多く、積極的に希望してくる方が多いですが、前述のように、私たちは、ジェネリック医薬品についてはほとんどメーカーからデーターの提示も受けておりませんし、認可されているということで同等品であるという「お墨付き」を信じるしかありません。少なくとも自分は原則、一般名処方、変更可の処方箋を出しています。
一方、生活保護受給者の方々は、比較的先発品を希望される方が多いように思います。これについては、おそらくですが、自己負担がないため、「どうせ処方してもらうなら、高くても効果や品質が確実なもの、今まで飲み慣れているものがいい」という考えかなと思います。その気持ちについては理解できなくもありません。
困る問題
生活保護受給者の方々の処方がジェネリック医薬品を原則とするのはいいですが、気になったのは「医師が問題ないと判断すれば」という文言がついているのが気になりました。この手の話は、大体画一的に決めごとをすると、問題が起きることがあるので、文言をぼやかしているのですが、実際、先発品を希望しているのに、後発品を強く勧められた患者さんが、医師や薬局に強いクレームを入れる可能性があります。今回の問題に限らず、近年、無理な要求をしてきたり、些細なことに強いクレームをつけ、診療時間が圧迫されるケースが増えてきました。行政上の理由でジェネリック医薬品を推進するのであれば、その点をしっかり患者さん側に理解してもらうような取り組みをしてもらいたところです。
思ったこと
生活保護の問題とはちょっとずれるのですが、特許が切れた薬は、先発品メーカーも大幅に薬価を下げればいいのでは?と思ったのですがどうなんでしょうか。
20年くらいは独占的に販売しているのですから、いわゆる減価償却は終わっているはずですし、後発品が出てくれば、大幅なシェアの低下は避けられないわけですから、ねえ。